ベンチャーの「現象学的」経営
毎週土曜日はデジハリ大学院で「起業ゼミ」。
今回は泉の広場の映画館「梅田ピカデリー」のビルに入居されている(株)アーキ・ヴォイスにお邪魔して、荒木社長から起業から今に至るお話をお聴きすることにした。
荒木氏は現在33歳、B2Cとしては大阪と京都で中国語・韓国語のスクールをされていて、B2Bでは売上の中心となっている翻訳・通訳事業をされており、こちらは東京にも進出されている。
それ以外にはブライダルビデオ制作と各種スクール向けWEB集客・構築支援事業、また、別会社として海外事業のM&Aを行う事業を行われている。
と、このように書くと、なんだかやり手の起業家に見えるには違いないが、ちょっとそれまでの経歴が変わっていて、学部・修士課程・博士課程とドイツ哲学、とりわけハイデガーを研究してこられてきた方なのである。
まあそのまま研究の道へと行く選択肢もあったのだろうが、いろんな経緯があってドイツ語ならぬ中国語の教室を京都のホテルの一画をお借りされてスタートということになる。
当初は金なし、コネなし、知識なしの状態からであり、現在でもライフワークとなっているチラシ配りで集客を始められた。
ケータイ片手にたった一人で。
「えっ?」と思われる方がいるかもしれないが、私としてはこのような創業スタイルというのは至極当然に思えるのであって、カネと人がないと創業できないというほうが、特別なケースであると考えるのである。
なぜなら、もともとカネがあるというのは、よほどの金持ちのボンボン以外には少ないだろうし、創業前から爆発的に売れることが約束されているほど、お客さまのことに精通している創業者なんて、滅多にいないわけで、だとすればチラシを配りながらお客様の反応を肌で感じるというのは、それを実践する人が稀であるとしても、当然ありうる選択肢としておかしくないと私には思えるのだ。
その後スクールの教室を構えられることになるが、その際もカネがないので自宅にあった古いちゃぶ台を持ってきてのスタート。
う~む、超自然体。
チラシ配りといっても、もちろん漫然と続けられたわけではなく、反応率を少しでも上げるべくヘッダー、キャッチコピー、フックコピー、画像などを工夫に工夫を重ねてこられてきているし、WEBによる集客も2003年からSEO対策を施され、日々アクセスログ解析結果を十分に検討しながらの取り組みなのである。
ベタな営業にも力を入れてこられたが、まったく知識がないところからのスタートだったので、お客様から学ぶことを徹底的にされてきている。
もっとも印象的なのは、生き方を含む経営の考え方が極めて「現象学的」だということ。
すなわち、あらゆる先入観を持たずに(エポケーして)まずやってみて、そこでたち現れた現象には失敗点を含んでいるから、そこをすぐさま改善していかれる。
先入観を持たずに実践してみるということにより、ほかの人なら絶対売れるわけがないと思うようなところからも大口の注文が舞い込んだりもする。
たとえば、あることで悩んでいる人がいるとすると、この論理でいくと、その人は悩んでいたいから悩んでいるんだということになる。
この事業がやりたいと思えばやればいいし、やりたくないのなら無理にやる必要はない。
誰でも今行っている仕事というのは、自分がやりたいからやっているのであって、本当にやりたくないのであればやっていないだろうし、そう自ら選択したのはほかでもない自分自身だということである。
売れていないのは、売りたくないと思っているから売れていないのだし、売りたいと思っているのならお客さまがどのようなものならほしいと思うのか、お客さま自身にも聞くだろうし、売れるように行動するにきまっている。
このきわめて現象学的な経営論は、おそらく長年ハイデッガーの現象学を徹底的に読んでこられた結果、身につけられたのだろう。ご本人はそのようには発言されなかったが。
すべては自分自身をしっかり見つめなおし、やりたいことをやる。
だから事業規模もこれ以上拡大したくないと思えば、そこで止められてほかの事業に専念されるし、そもそも儲かりそうでも、やりたくない事業はやらない。
ゼミの時間は表向き2時間ということにはなっているのだが、近所にある本格的韓国料理のお店に移動して、始発電車の走る頃までさまざまなお話をお伺いした。
以前会ったのは、まだ京都だけを足場に事業をされていて、現在は大阪中心に、近いうちに東京でもスクールを開校される予定だということで、その頃には東京でお会いする機会も増えるかもしれない。
久しぶりに興味深い起業家のお話をお聴きできて、たいへん満足。
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一昨日は、本当に朝方までおつきあいいただき、
まことにありがとうございました!
久しぶりにお会いできて、とてもうれしく思いました。
私の行動が「現象学的」といえるのかどうかは
疑わしいのですが、モノを知らなかったのは事実です。
咲本様のお話は、いつも大変勉強になります。
また、ややこしい話で盛り上がりましょう!(笑)
コメント by 荒木賢一 — 2007/01/29 月曜日 @ 12:22:39
荒木さん、早速のコメントおおきに!
> 私の行動が「現象学的」といえるのかどうかは
> 疑わしいのですが、モノを知らなかったのは事実です。
モノをお知りになっている現在でも、十分現象学的やと思います。
> また、ややこしい話で盛り上がりましょう!(笑)
は~い、ややこしい話、大好きです(^_^;
コメント by 咲本 — 2007/01/29 月曜日 @ 12:30:51