心脳コントロール社会
ジェラルド・ザルトマン『心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press』
ほんとは一年ほど前に購入したザルトマンの上掲書を読みたかったのだが、ついつい読んでいないまま放置していたところ、下記小森氏の新書が出たので、先に薄っぺらい新書のほうに手が伸びてしまった。
小森氏の本は要するにザルトマンの本をごく簡単に要約したものであり、それを左翼がかった視点から、政治を中心に行われている心脳コントロールに騙されるなと主張している。
この朝日新聞論説委員風の視点にかなり違和感を感じざるをえない。
大体、わざわざこんな説明をしてもらわなくても、政治におけるブッシュや小泉のプロパガンダについてはネットのヘビーユーザーのほとんどの人が気づいているわけだし、全く気づいてこなかったような人達が本書を手に取るとも思いがたい。
とりわけ日本の場合には、少しばかり心脳コントロールによる大衆操作がうまくいったからといって、少し政治がうまくいってなさそうになると、あっという間に政権交代となってしまうような歯止めのきくような仕組みが、一部例外を除けば歴史上きわめて長く続いてきている社会なのである。
さて、心脳マーケティングの要点を知りたければ、本書第二章を読むだけで十分。
代表的手法として2つあり、「プライミング」と「フレーミング」。
プライミングとは、
一つのキュー(刺激)が、ある特定のエングラム(記憶)を活性化させ、そのエングラムが次には別なキューの役割を担い、別なエングラムを活性化する、といういくつかのプロセスを積み重ねれば、かなり的確に、ある特定の一つの方向に、人々を誘導していくことが可能になるわけです。(中略)
「現在の経験を取り巻くコンテクストが、我々が記憶を記銘したもともとのコンテクストとどれほど似ているかによって、その記憶をどれほど簡単に想起できるかを左右する」
ということ。
フレーミングのほうは、「バックワード・フレーミング」と「フォーワード・フレーミング」があり、
たとえば、もしマーケターが過去の経験についてそのポジティブな側面を語ったとすれば、消費者がその製品や買い物について思い出す経験内容は、実際にその人が経験した内容とは異なったものになる。この現象はバックワード・フレーミングとして知られている。逆に、フォーワード・フレーミングによって、マーケターは将来起こり得る経験に対する期待を消費者に抱かせる。こうした期待の影響によって、実際に起こる経験の内容や、その経験の記憶も変わってしまう。
つまりは、
自分の経験を自分で意味づけるのではなく、マーケターによって意味づけてもらい、それを信じこむ、それが「フレーミング」にはめられた人間の心と脳なのです。
ということ。
まあマーケティング活動の中で普通に行われていることであって、これを小森氏のようにけなしていこうとすれば、 人間の学習プロセスまで否定されることになる。
あまりにも小森氏の本の内容が乏しいものであるがゆえに、心脳マーケティングによる無意識へのアプローチ手法について、久しぶりにザルトマンの書のほうに直接あたってみたくなってきた(^_^;
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