いつもこれはどうかな?と思って手にしてみても、ほぼ全てに近い書籍がまるで週刊誌の記事のようなもので、週刊誌的な関心事として参考になることはあっても、書籍として満足のいくものかといえばほど遠いものばかり。
現在新刊として発売される90%くらいを雑誌分類にしていただきたいくらいだ。こんな中、関西の経営学界の現役のドンともいえる石井先生の新刊が岩波新書から出ていた。(ご本人は加護野先生がドンであると主張されるかもしれませんが。)
石井淳蔵『ビジネス・インサイト―創造の知とは何か』(岩波新書)
この本はある意味で、私が19歳くらいからずっとブレることなく思想の肝としていたところを書籍の骨格として展開された経営学書ということに気づき、やっと経営学の世界でもそうなってきたかとの感慨をもって読ませていただいた。
骨格と著者自身も言っているのは、マイケル・ポランニーの暗黙知理論のこと。
今まで経営学で暗黙知という言葉が使われるシーンとしては、言語化できる明示知に対する言葉。
これは野中郁次郎氏などが中心となって展開されたナレッジ・マネジメントにおける言説であった。石井先生はそれを指摘しつつ、本書でいう暗黙知はそれとは違うところを表現することを明確化するために、あえて「知の暗黙の次元」という表現を使用されている。
今までは熟練した職人の言語化できないようなスキルを言語化していくという文脈ばかりに関心を持たれていた暗黙知であったが、やっと暗黙知理論の肝を理解して理論展開しようとする研究者があらわれたなあと私としてはうれしいかぎり。
依って立つところは石井先生と私は同じに見える。
ポランニーの理論を明示知に対する暗黙知ということだけではないところの暗黙知理論の重要な部分に注目され、そこに経営学の今後の展開の可能性を見出され、暗黙知理論の周辺分野となるアフォーダンス理論やオートポイエーシス理論の河本英夫氏にまで言及されているところは、こういう話のわかる経営学者がいたのだと、とても親しみを感じてしまった。ということで第3章まではフムフムと納得しながら読みすすめられたのだが、問題は石井先生の主張なさりたい後半部分。
学部生やMBA学生へのケーススタディの有効性について説明が展開されるが、前半部分の展開と比べて、かなり苦しい論を展開されている印象を持つのは私だけなのであろうか。
従来型とは違うケース・スタディとケース・リサーチを説明され、ご自身の活動を正当化したい意思があることは伝わったが、私はこの後半部分の展開については、ミンツバーグの↓下記書籍での主張を支持したい。
H・ミンツバーグ『MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方』
現在、石井先生は大学の学長に就任されていることでもあるわけだし、既存のケースに囚われることなく、ミンツバーグ的な発想で教育や研究について実践的に取り組まれることが可能な立場であるかもしれず、それだけに書籍の後半部分についての大幅軌道修正の道を是非模索していただきたい。
言い方が偉そうなのは、すみません。 私のスタイルなので。直接会話すればそんな偉そうでないことは簡単に払拭されますのでお許しのほどを。


















