マーケティングにおける記号学の活用

「無謬性が私のモットーです」みたいな公的職員の方とメール交換していると、ほんま疲れる。ふぅー。

先週の大学院講義で文化記号論やレトリックへの造詣がマーケターには必要との私自身の言葉に影響を受けて、かなり久しぶりに丸山圭三郎氏の著書を取り寄せた。

文化のフェティシズム 丸山圭三郎『文化のフェティシズム』


この手の本の中では1984年以来第13刷まで続いており、なかなか健闘しているほうではなかろうか。

丸山氏の存在は、言語学者ソシュールの言わんとしていることをソシュール以上に明快に説明してもらえ、かつ廣松物象化論や市川浩身体論、 ボードリヤール象徴交換論など諸分野との関係性まで明らかにしてくれた上に、ソシュール自体も乗り越えていこうとするスリリングな理論を提唱されたという意味で、当時20歳前後のうら若き青年であった私に大いなる知的刺激を与えてくれた学者だ。

本書が出るまでにNHKのフランス語講座講師のイメージからソシュール研究の世界的権威へと認識を新たに変えさせられたのであったが、この書で「言分け(ことわけ)構造」なる仮説を提唱されて以来、丸山独自理論を提唱するための書籍が量産といってもよいペースで出版されていき、急逝されたのはまるでご自身の死期がわかっていて理論を世に問うのを急がれたようにも見えなくもなかった、そんな出発点ともなるのが本書である。

丸山氏の提唱する「言分け構造」とは、市川浩が身体論哲学を推し進めるのに「身分け(みわけ)」というアプローチに活路を見いだしたことをヒントにされており、

人間が動物である限り、私たちもまた〈環境世界・内・存在 In-der-Umwelt-sein〉であり、この〈身分け構造〉のなかに生きていることは間違いないと言ってよい。ところが、人間だけがこのような本能の図式に加えて、もう一つのゲシュタルトを過剰物としてもってしまった時から人間となったのではあるまいか。これが私の仮説用語である第二次分節の結果生ずる〈言分け構造〉であり、その網の目は「シンボル化能力とその活動」という広い意味でのコトバによるゲシュタルトにほかならない。(p.73-74)
と定義付けされているものだ。

その後、なぜ〈過剰 excès, surplus, ubris〉なのかという議論に移っていくのだが、そちらは省略して、なぜ「身分け構造」ではなく「言分け構造」の視点が必要なのかというと、

〈言分け構造〉に見出される〈用在性 Zunhandenheit〉は、あくまでも人工的道具を介しての用具連関であり、その基底は〈欲求 besoin〉でなく〈欲望 désir〉である。動物と人間に共通して見られる二大本能として、個体維持のための食欲と種族保存のための性欲があることはよく知られていても、動物における食欲と性欲が、それぞれ身分けによる生理的食欲求と性欲求であるのに対し、人間のそれは、言分けられた食欲望と性欲望であることに気づく人は少ない。(p.115)
から、そこに焦点を当てる必要があるからだ。

それがなぜマーケティングに必要になってくるねん!というところに少しだけ話を近寄せると、

J・ボードリヤールの諸著作に一貫して見出されるものも、この「欲求から欲望へ」変容した人間性に対する、ラディカルな批判である。これは人間の行動様式が生物学的不足・充足の関係で規定されると考えていた〈有用性 utilité〉中心主義、生産中心主義の近代西欧経済学への批判でもあり、この発想を百八十度転換させない限り、巨大なテクノクラート的企業が生み出した現代の技術・管理社会や、ブランド価値、威信価値、マスメディアが作り出す疑似イヴェントというシミュラークルに操作される大衆文化の解明は不可能であるという。このボードリヤールの指摘を幾分修正して言えば、彼が告発する「欲求から欲望へ」の変容は、何もポスト・インダストリヤルな現代社会に限った現象ではなく、はるか原始の世界から人間文化の基底にあったのである。(p.115-116)
すなわち、ブランド価値を理解したり商品価値を考えていくには、人間文化の基底にある「欲望」の構造を理解していこうとすべきなのであり、
ランガージュは、それ自体が一つの過剰であると同時に、過剰な〈意味=現象〉をもちたいと願う欲望の源でもあるのだ。(p.117)
と主張されているように、「ランガージュ」の解明が、ひいては「欲望」の解明にもなっていくのであり、マーケターはランガージュを理解して、その構造をビジネスに活用していくべきとの論理となるのである。

全くの余談ではあるが、ランガージュの仕組みを悪用して銭儲けしようとセミナーのネーミングを発想すれば、某氏のように「人運・金運、ツイてる経営者になる魔法の・・・あっ、やめとこ(^^;

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