シェーンベルク「浄められた夜」「グレの歌」
溜まった感がある疲れを癒す一日。
Schoenberg: Verklrte Nacht, Pelleas und Melisande / Karajan, Berlin Philharmonic Orchestra
癒しも兼ねて、まだ聴いていなかったCDのひとつを聴く。
カラヤン指揮ベルリン・フィルのシェーンベルク「浄められた夜(浄夜)」と交響詩「ペレアスとメリザンド」。
とりわけ「浄夜」のほうは有名曲でありながら、ライブ演奏で表現不可能な箇所をミキシング技術によって完璧に表現した名盤中の名盤といわれるもの。
「浄夜」のアルバムを入手しようと思っても、意外なほど少なくて驚かされるのであるが、その中にあってこれだけ完成度の高いアルバムでありながら廉価であるところもうれしい。
この時期のシェーンベルクの作品はまだ12音技法などの前衛音楽へと傾倒していく前の初期作品であり、半音階を多用した複雑な表現が後期ロマン派の作品として傑出した輝きを放っており、私のような素人にはたいへん心地よく聴くことができる。
カラヤンの古典派交響曲はあまり好まないのであるが、近現代曲となると俄然魅力的な演奏となってくるように思う。
このシェーンベルクのアルバムも耽美的な極致みたいなところを、彼の美学が存分に発揮されたものに仕上がっていてとても気に入った。
Schoenberg: Gurrelieder / Simon Rattle, Berliner Philharmoniker
こちらの「グレの歌」もシェーンベルク初期の代表作なので、私のような者にも愉しみやすい。
サイモン・ラトル指揮で5管編成を超えるベルリン・フィル、それ以外にソプラノ、メゾソプラノ、テノール2人、バスの独唱、ベルリン放送合唱団、ライプツィヒ中部ドイツ放送合唱団、エルンスト・ゼンフ合唱団による300名近い大合唱団といった構成で2001年ベルリン芸術週間に行われたその時の目玉公演のライブ録音である。
私は歌曲を好まないのであるが、大編成化していく中で必然的に合唱や独唱が入ってくる曲に限っては、声楽もひとつの楽器のようにして受け入れられるのであった。
逆にこのような曲を声楽を使わずしてまとめようとすると、マーラーの交響曲第1番やリヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」「ツァラトゥストラはかく語りき」に見受けられるようなチャラチャラとしていて何とも不自然かつ耳障りな金管楽器による旋律が入ってきたりするものなのだ。
というのは私の偏見であって、この曲は本来的には大編成オケをバックにした歌曲という分類であるのだろう。
「グレの歌」の筋書きは下記のようなもの。
HMV.co.jp - シェーンベルク - グレの歌 ラトル / ベルリン・フィル、ほか
《グレの歌》は、実在のデンマーク国王ヴァルデマール(在位1157-1182年)をめぐる伝説にもとづいています。国王とその愛人トーヴェとの悲しくもグロテスクな物語のあらましは以下の通りです。
この手の寓話に良くあるパターンですが、国王ヴァルデマールには嫉妬深くわがままな妃がおりました。嫌気がさしたヴァルデマールは、トーヴェという美しく気立ての良い女性を愛人とし、グレの地にある狩猟用の城郭で逢瀬を重ねます。
が、ほどなく不倫は妃にも知れるところとなり、やがてトーヴェは妃によって毒殺されてしまうのです。ヴァルデマール王は激昂して神を呪ってしまいそれが 原因で天罰によって命を落とすこととなり、おまけにその魂は昇天することが許されず、大勢の兵士の幽霊を引き連れトーヴェの魂を求めて夜な夜なグレの地を 徘徊することになってしまいます。
時は流れ夏の嵐に替わって実りの秋が到来。収穫の季節にふさわしく農夫も登場し、やがて道化師と語り手も登場して、幽霊たちの壮絶な合唱を交えながら も、二人の魂の救済に向けて盛り上がりをみせます。最後は混成8部合唱による壮大な太陽の賛歌となっており、女声合唱の参加による色彩の変化が、魂の救済 の可能性を暗示しているかのようです。
さて、これだけの超特大編成で徹底的なロマンチシズムに溢れる曲の響きを聴いても、マーラーとは随分違った印象を受ける。
それを喩えて表現するなら、9.11以降の米国のように経済はそれなりにバブリーなところもあり、一見明るく振る舞ってはいるものの、いつどこで起こるかわからないテロの恐怖と、好景気=バブルというものもいつ崩壊するかもしれないという不安定感といった影がのしかかったような暗さを内包しているのだ。
そこがまた何とももの悲しくもこの曲独特の美しさでもある。
かといってラトルはロマンチシズムに陶酔してしまったような演奏にはせずに、緻密に各セクションを構築していったと思わせるようなものに仕上がっているところがよい。
24日には京都市交響楽団による「グレの歌」公演を聴きに行く予定なんだが、特大編成であることはおいといても、この難曲を表現し切ることができるのかどうか、ちょっと心配になってきたところ。
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