と、そんな事情を知ったのはコンサート会場に着いて配布パンフを読んでいて知ったのであって、自分自身でコンサートの申込を意思決定したわりには、今回が就任記念のものであること、常任指揮者への就任という事実そのもの、それらが欠けたままであった。
しかしまあ、これは画期的にすごいニュースである。
ミスターSといえばブルックナー交響曲に定評がある現存する指揮者の中では間違いなく3本の指には入る巨匠だと思う。
CDとして発売されているブルックナーやベートーヴェンの全集によって、普段あまり聞き慣れないザールブリュッケン管弦楽団を一躍世界一流レベルにまでのし上げたのがミスターS。長年指揮を振ってきたミネソタの楽団も無名から一流へと育てた。
そんな彼がよくぞ読売日響と契約することを決めてくれたものだ。
間違いなくオケのレベルは上がっていくことが期待できる。
さて、演奏会場となった東池袋にある東京芸術劇場大ホールには初めて行った。
建物に入ってすぐが、小ホール。大ホールはその上層階になるという、土地代を意識したのか変わった造りとなっている。
だから建物に入るとまずは延々と伸びていく巨大エスカレータに出くわすことになる。

↓大ホール内に入って一番目を引くのは、やはり写真にあるパイプオルガンの存在感。

装飾的な彫刻に金箔押しがなされていて、木目の落ち着いた色合いは少し漆をすり込んだような感じに見える。
どのような音色が出るのか見当もつかないが、見た目だけでいえばこれだけデザイン的に目を引くパイプオルガンにはお目にかかったことがない。ミスターSはなんだかんだいっても、もう84歳だ。
ホントに指揮するのが大丈夫なのかなあと若干不安もあったが、ご本人が登場してびっくり。イスに座って指揮するわけでもなく、背筋がピンと伸びていて、まったくヨボヨボとしたところが見受けられない。
ブルックナーの4番は約70分もあるが、暗譜で終始立ったまま全てが視野に入りきっているといわんばかりの堂々たる指揮ぶりだった。
現役バリバリ感があるというか、エネルギッシュささえ感じさせてくれるものであった。
読売日饗の演奏には正直言って海外オケのようにはまったく期待してはいなかったし、ホントにまともな演奏ができるのだろうかと心配すらしていたが、なんのことはない。
ミスターSが鍛えなおしたことも影響しているのだろう。かなり水準の高い演奏を聴かせていただき、大満足だった。
ミスターSのブルックナー演奏の特徴がはっきり出た好演だったと思う。
第1第2ヴァイオリンを左右に配置するスタイルで、チェロは中央奥、コントラバスは左側奥。あれれ?こんなことをこのパートではやっていたんだと再認識させられるばかりで、普段ほかの指揮者では聴こえてこないフレーズの数々が浮き彫りとなって立ち上がっては消えていく。
それでいて全体のバランスを崩すこともなく、というよりサウンドバランスが絶妙で金管楽器が朗々と歌い上げるような場面でも、それで全てがかき消されることもなく、イロイロな音がそれぞれ意味を持たせて聞こえてくるのだ。
だから、そうしている意図・必然性のようなものを感じさせながら、数々の音が聞こえてくるわけで、単にごちゃごちゃ聞こえてくるという性質のものではない。
そのあたり、たとえばクラウディオ・アバドのように主旋律をきれいにうたわせ、あとは伴奏といった単純な分類しかしていないような大雑把な解釈で済ますことがなく、旋律にロマン主義的に溺れることもない。
その逆で、曲の細部に至るまでの譜面読解によって構造を把握しきっていて、それを一つ一つ細部にまで指示を施し、見事に表現し切っているのである。
いやあ日本にいながらにしてというか、日本のオケでここまで水準の高い演奏が聴けるなんて、なんとも贅沢というか有難いというか。
ひとつだけ残念だったのが、感動的な演奏であっただけに最後に曲が終わった残響にずっとというか、少なくとも10秒くらいは音なき音に浸りたかったのだったが、3~4秒後に会場の一部から拍手が起こりだした。
でも指揮者・楽団員がそれでもピクリとも動こうとしないことを目の当たりにして拍手の手は止み、再び一瞬の静寂に戻り、そしてまた拍手が起こりだすという奇妙なことが起こった。演奏が終わったら拍手するものだという悪しき暗記物症候群的反応はやめてもらいたいというか、そんな人がブルックナーの交響曲を堪能できるとはとてもではないが思えないのだが。
まあそのことは残念ではあったが、昨年秋のアバド来日公演におけるブルックナーにはガッカリさせられただけに、同じ交響曲4番の演奏で今回の満足度はたいへん高い。
というか、一生耳にこびりついて忘れられない演奏ということになるだろうな。ちなみに下記CDはものすごくおススメ。





















勇気がなくても今からわかっていたら何とでもなるでしょう。
けっこうイロイロありまっせ(笑)
6月3日(日)尾高忠明指揮NHK交響楽団:ブル8
6月21日(木)高関健指揮東京シティ・フィル:ブル8
9月18日(火)ミスターS指揮読売日響:ブル3
10月13日(土)上岡敏之指揮ヴッパータール交響楽団:ブル7
11月4日(日)ティーレマン指揮ミュンヘン・フィル:ブル5
11月23日(金)ヤンソンス指揮バイエルン放送響:ブル7
ちなみに私はティーレマン&ミュンヘン・フィルのブル5が大好きなので、必ず行きます。
うち2回が、ミスターS指揮読響による「ブルックナー/7番」です。(ちなみに、もう1回はプレトニョフ指揮ロシア・ナショナル・フィル「チャイコフスキー/4番」)
3/200とは、確率の低い話ですが、ミスターSは、高打率指揮者とイチ押ししたい。